DV夜明け前
まだ志無巻がハタチそこそこ。ライブハウスをうろうろしていた頃のことでございます。京都の
とあるバンドでベースを弾いていた究極君。彼には年上の彼女がおりました。志無巻から
みて3つほど年上であった彼女はかなりの男前。もし志無巻が男なら口説いてみたい女№1
でございます。
さてこのカップル。彼のワンルームに彼女が転がり込む形で半同棲をしておりました。いくら
愛し合っているとはいえ若い二人が狭い部屋。多少のモメごとは起ころうというものでござい
ます。その日は朝から彼の虫の居所があまりよろしくない様子。それに気づかないフリを
決め込み生活のカテであるモノを作るため絵の具片手に作業をしていた彼女。
イライラしながらビデオを見てた彼が突然立ち上がり「風呂はいるわ」と声高らかに宣言。
「いっといでー」と彼のほうを向いた彼女。次の瞬間、何が気に入らなかったか彼が彼女の
アタマをガツーン!と一発はたいていったというのです。意味不明。今ならDVで訴えられる
ところでございますし、志無巻ならばその時点で出てゆきます。しかしこちらの彼女は
「かなりの男前」。その程度のことで出て行ったりはいたしません。彼女がとった行動とは。
まず手元にあった絵の具の中から「赤」をチョイス。軽く黒と水を混ぜ、血糊をつくると自分の
オデコにペタリ塗布。何事も無かったように作業に戻ったそうでございます。
さて10分もするとた彼がお風呂から上がってまいります。湯上りで気分もスッキリ。片手
には缶ビール。「スッキリしたぁ?」振り返った彼女の額には滴る血糊!意味不明の言葉
をつぶやき彼女の元に駆け寄ると、持っていたタオルで彼女の額をこすり始めたそうで
ございます。笑いを堪え彼女が「どうしたん?」と問うと「何でもない!」を繰り返すカレ。
それ以降、冗談でも、酔っていても、二度と彼女に手をあげることは無かったとのこと。
素晴らしい調教の腕でございます。
その後、彼らがどうなったのかは知る由もございませんが、少なくとも彼女のほうだけでも
幸せになっていてくれることを願ってやみません。